通信制高校と全日制高校は、どちらも「高校卒業資格」が得られる教育制度ですが、その中身には大きな違いがあります。特に注目されるのが、使用される教科書の違いです。「通信制の教科書は簡単すぎるのでは?」「全日制の教科書と比べて内容が薄いって本当?」といった疑問の声も多く聞かれます。
しかし、これらの違いには明確な理由が存在し、単なる“学力差”の問題ではありません。この記事では、通信制高校と全日制高校の教科書について、採用基準・学習レベル・カリキュラムとの関係性を詳しく解説。教科書の内容がどう異なり、なぜそうなっているのかを理解することで、進学・転入の判断材料にもなります。
通信制高校を検討中の方、または既に在学していて「この教科書で大丈夫なの?」と不安な方にも、ぜひ知っておいていただきたいポイントをわかりやすく紹介します。
通信制高校の教科書はなぜ簡単?採用基準の背景を読み解く
通信制高校の教科書についてインターネット上では「内容が簡単すぎる」「中学の復習みたい」という声を見かけることがあります。特に数学や英語など、主要教科の内容が基礎的すぎて驚くという保護者や生徒の声も多く、全日制高校との学習レベルの差に不安を感じるケースもあります。
では、なぜ通信制高校ではこのように“簡単”な教科書が採用されるのでしょうか?背景には、通信制高校という教育システムの成り立ちや、文部科学省の教科書制度、そして通信制高校の生徒層の特性が大きく関係しています。
通信制高校の目的は「高卒資格の取得」が第一
通信制高校は、全日制高校や定時制高校と並ぶ正式な高校教育の一形態であり、卒業すれば「高卒」の資格を得ることができます。しかし、その目的には少し違いがあります。全日制高校が大学進学や専門的な学力の習得を重視するのに対し、通信制高校では**「誰もが高校を卒業できること」**が大きな目的の一つとされています。
実際、通信制高校に入学する生徒には以下のようなケースが見られます。
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中学時代に不登校だった生徒
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発達障害やメンタル面の課題を抱える生徒
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スポーツや芸能活動と両立する必要のある生徒
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社会人・子育て中の再入学生
このように、学力や学習習慣に大きなばらつきがあることが通信制高校の大きな特徴です。そのため、基礎的な内容を丁寧に学べるよう、教科書も「最もやさしいレベル」から選定される傾向にあります。
文部科学省の教科書検定制度と複数レベルの教科書展開
日本の高等学校で使用される教科書は、文部科学省による検定を経て「検定済教科書」として採択されます。各出版社は同じ教科であっても、異なるレベルの教科書を複数発行しており、学校はその中から独自に選ぶことができます。
例えば東京書籍が発行する「数学Ⅰ」だけでも、以下のようなバリエーションがあります。
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難関大学を目指す生徒向け(発展レベル)
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標準的な進学校向け(中位レベル)
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基礎力を重視する高校向け(基礎レベル)
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通信制や支援学校向け(最基礎レベル)←「新数学Ⅰ」など
つまり、「教科書が簡単」なのではなく、その学校に合わせて最も適切な教科書が選ばれているということです。
文部科学省の教科書制度に関する詳しい解説はこちら
👉 文部科学省 教科書制度について
NHK高校講座との連携が前提になっているケースも
多くの通信制高校では「NHK高校講座」と連携した学習スタイルを採用しており、これは教科書の選定にも大きく関係しています。NHK高校講座は、基礎レベルの教科内容を映像で丁寧に学べるコンテンツであり、全国どこにいても無料でアクセスできます。
たとえば、NHK高校講座「数学Ⅰ」は、東京書籍の「新数学Ⅰ」の内容に対応しており、放送授業と教科書の内容が連動しているため、同じ教材を使う学校が多いのです。
このように、放送教材との親和性も考慮して、通信制高校では「最も簡単で映像講義と連携しやすい教科書」が選ばれているというわけです。
NHK高校講座はこちらから視聴可能です
👉 NHK高校講座
通信制高校の教科書が簡単であることのメリットと注意点
簡単な教科書を使うことには、以下のようなメリットがあります。
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学び直しに適している
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誰もがついていける学習スピード
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達成感が得られやすく、モチベーションにつながる
一方で、注意が必要なのは、大学受験などの応用的な学力までは身につかない点です。進学希望者は、教科書に加えて外部の参考書・問題集を使って自学自習を進める必要があります。
つまり、通信制高校の教科書は「高卒資格を取るための最低限の教材」であることを理解し、進学・就職など将来の目標に応じて学びを補強する姿勢が求められます。
通信制高校と全日制高校の教科書の違いとは?
通信制高校と全日制高校では、卒業すれば同じ「高等学校卒業資格」が与えられますが、実際の学びの中身や教科書の選び方には大きな違いがあります。特に教科書のレベル・種類・活用の仕方については、「通信制の方が簡単」「全日制の方が網羅的」という印象を持たれることが多いです。
しかし、こうした違いは単なる“学力差”ではなく、学校ごとの教育方針・生徒層・学習スタイルの違いに起因しています。ここでは、具体的な教科書の中身と構成に着目しながら、通信制高校と全日制高校の教科書の違いを丁寧に解説していきます。
教科書のレベル:通信制は「基礎重視」、全日制は「応用含む」
通信制高校で使用される教科書の多くは、教科ごとに出版会社が発行する中でも最も基礎的なレベルのものです。たとえば、東京書籍の「新数学Ⅰ」は、足し算・引き算といった基礎演習からスタートし、全体のページ数も他のバージョンに比べて圧倒的に少ない(例:170ページ)という特徴があります。
一方、全日制高校(特に進学意識がある普通科)では、教科書検定で認可されている中位~上位レベルの教科書が使われることが一般的です。数学Ⅰであれば、数研出版の「改訂版 数学Ⅰ」や啓林館の「精選 数学Ⅰ」など、応用問題も掲載された教科書が主流になります。
教科名 | 通信制高校の一例 | 全日制高校の一例 |
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数学Ⅰ | 東京書籍「新数学Ⅰ」 | 数研出版「改訂 数学Ⅰ」 |
英語 | 東京書籍「All Aboard! Ⅰ」 | 啓林館「CROWN English Communication Ⅰ」 |
現代文 | 東京書籍「新編 現代の国語」 | 第一学習社「標準 現代文B」 |
このように、同じ教科書会社でも、異なるレベルの教材が用意されているため、学校の方針に応じて使い分けられています。
学びの深さと内容の幅:教科数と単元の取り扱い方にも差
通信制高校では、必要最低限の単位取得を前提としたカリキュラムになっていることが多く、学習する教科や単元の範囲もコンパクトです。
たとえば、理科であれば「科学と人間生活」「生物基礎」など、大学受験では使用頻度の低い基礎科目に絞られがちです。また、社会科も「歴史総合」「公共」のみで完結する学校もあります。もちろん進学コースがある通信制高校では、必要に応じて日本史探究・世界史探究などを履修できますが、あくまで例外的です。
一方、全日制高校では「文理選択」が行われることが一般的であり、**2年次以降に高度な科目選択(数学Ⅱ・B、化学、生物、地理B、日本史Bなど)**が必要になります。大学進学を見据えた深掘り型のカリキュラムが主流です。
教科書の使用スタイル:自主学習か、授業前提か
通信制高校では、教科書はあくまで「自学自習」のベース教材として使われます。生徒は決められたレポート(添削課題)に取り組み、スクーリング(登校授業)で教員のフォローを受けるというスタイルです。
そのため、教科書も**「一人で読んでも理解しやすい構成」**が重視されており、図解・イラスト・会話形式が多用される傾向があります。また、NHK高校講座とリンクした構成が多いため、放送視聴と併せた学習がしやすい工夫も見られます。
一方、全日制高校では、教科書は「授業で先生と一緒に進めること」が前提です。説明は必要最小限にとどめ、板書や講義を中心に補完していく形の教科書構成になっており、自学だけでは理解が難しいパートも含まれています。
教科書費用と管理:通信制では「教材費に含む」ことが多い
教科書にかかる費用についても、通信制と全日制では異なる点があります。
通信制高校の場合、多くの学校では「教科書・副教材・レポート用紙一式」が入学時や毎年の教材費として一括請求されるスタイルを取っています。そのため、教科書代は授業料の中に含まれている場合が多く、保護者が個別に購入するケースは少数派です。
全日制高校では、進学に応じた教科書選定が行われるため、毎年4〜5万円程度の教材費が別途発生することも珍しくありません。副教材・問題集・参考書がセットになっていることが多く、学習負担と同様に教材費負担も大きくなる傾向があります。
通信制高校における教科書の扱いと費用の実際
通信制高校に通ううえで、気になるのが「教科書ってどうやって手に入れるの?」「費用はどのくらい?」「使い方は全日制と違うの?」という点です。一般的な高校とは異なり、通信制ならではの教科書の配布方法や学費の内訳、教科書の役割には、独自の運用ルールが存在します。
本記事では、通信制高校における教科書の取り扱いと費用について、保護者や入学希望者が抱きがちな疑問にお答えしつつ、実際の学校運用例も交えて詳しく解説します。
教科書はどうやって受け取る?通信制では「一括支給」が主流
通信制高校では、教科書は生徒一人ひとりに学校側から指定されたものが一括で支給されるケースがほとんどです。生徒が書店で自分で選んで購入するスタイルではなく、学校が採択した教科書を年度ごとにまとめて郵送またはスクーリング時に配布します。
この一括支給には以下のような理由があります。
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使用教科書の統一によるレポート・課題の効率化
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通信授業で使用する放送教材(NHK高校講座等)との整合性確保
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生徒の学力差に配慮し、理解しやすいレベルを学校が選定
そのため、生徒が教科書を選ぶ自由は基本的にありません。また、年度途中の転入生には、その時点で必要な教科書のみを送付するなどの対応が行われるため、転入時期によって配布数が異なることもあります。
教科書費用の内訳と目安|授業料に含まれるケースが多い
通信制高校の費用は、一般的に「入学金」「授業料」「施設費」「教材費」「スクーリング費」などに分かれています。教科書に関わる費用は多くの場合、「教材費」または「授業料」に含まれている場合が多く、保護者が個別に教科書代を負担するケースはあまり見られません。
具体的には以下のようなケースが主流です。
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【私立通信制】…年間10,000~20,000円程度の教材費の中に教科書代が含まれる
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【公立通信制】…教科書費用は数千円〜1万円程度で、教科ごとに別途購入する必要あり
特に私立通信制高校では「教科書代込み」と明示されていることが多く、ゴールフリー高等学院や飛鳥未来高校などでは、「授業料に教科書費用を含む」ことで、追加出費を抑える方針を採っています。
たとえば、以下のような学校案内記述が見られます。
「指定の教科書は、授業料に含まれており別途購入の必要はありません」(ゴールフリー高等学院公式サイト)
一方で、公立の通信制高校では「教科書代は実費」となるケースが多く、生徒が教科ごとに購入を求められることがあります。文部科学省が発表している教科書価格一覧によれば、1冊あたりの定価はおよそ1,300~1,900円(税込)程度が相場です[1]。
通信制高校の教科書は何に使う?自学とレポートの基礎資料に
通信制高校における教科書の役割は、「授業の進行に合わせて予習・復習を行うための参考書」というよりも、**「学習レポートを完成させるための根拠資料」**として使われるケースが多いです。
多くの通信制高校では、1単位あたり数枚の学習レポート(課題)を提出する必要があり、その解答に必要な情報は、基本的に教科書に書かれています。
そのため、通信制高校の教科書は以下のような特徴を持っています。
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読みやすく、図表やイラストが多用されている
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会話形式やコラム形式で内容が整理されている
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問題演習よりも解説文・導入文が豊富
教科書は「読む教材」として機能し、問題演習や応用学習にはあまり向いていないことも特徴です。大学進学などを希望する生徒には、教科書に加えて市販の問題集や予備校教材の併用が必須となります。
転入時はどうなる?制服は流用可・教科書は再購入が基本
通信制高校に転入を考える際、「今まで使っていた制服や教科書はどうなるのか?」といった保護者の疑問も多く寄せられます。
結論から言えば、制服はそのまま使用可能なケースが多いですが、教科書は学校指定のものを改めて購入する必要があると考えた方が良いでしょう。
実際の学校の対応事例としては以下の通りです。
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飛鳥未来高校:「制服の購入は任意。前籍校の制服でもOK。ただし教科書は全て新たに購入が必要」
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くまもと中央高等学院:「前の学校の制服で通学している生徒も多い。教科書は学校指定のものに切り替える必要あり」
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ゴールフリー高等学院:「教科書は別のものを使用。教材費に含まれているため追加費用なし」
つまり、転入時には「教科書の買い直し」が前提となりますが、制服は無理に買い替えなくてもよい柔軟な対応が一般的です。
大学受験には対応している?通信制の教科書の限界と対策
通信制高校で使用される教科書は、文部科学省の検定を通過した正規の教材ですが、「大学受験に対応できるか?」という点になると、結論としては**「通信制高校の教科書だけでは不十分」**であるといえます。これは決して通信制高校が質の低い教育をしているという意味ではなく、「高卒資格取得」と「大学受験対策」という目的の違いによるものです。
ここでは、通信制高校の教科書が持つ限界と、大学進学を目指す生徒が取るべき学習戦略について詳しく解説します。
通信制高校の教科書がカバーする範囲は「基礎学力」まで
通信制高校では、多くの生徒が「高卒資格の取得」を目標に通っており、学力差も非常に大きいため、使用される教科書は「誰にでも理解しやすい」ことが最優先されています。
たとえば、東京書籍の「新数学Ⅰ」や「All Aboard! English Communication I」は、同社が発行する中でも最も基礎的な内容に特化した教材であり、内容的には中学の復習に近い単元も含まれています。
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【例】数学では因数分解や平方根の説明に多くのページを割いている
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【例】英語ではbe動詞や一般動詞から丁寧に解説されている
このため、国公立大学や難関私立大学の入試レベルには対応していないのが現実です。理科・社会についても、探究科目(日本史探究・世界史探究・化学・物理など)をそもそも履修しないまま卒業する生徒も多く、センター試験(現・共通テスト)の範囲すらカバーしきれないケースもあります。
教科書が足りない理由:演習量・出題形式・応用問題の欠如
大学受験において求められる力は、単なる知識の暗記ではなく「思考力・応用力・速解力」です。しかし通信制高校の教科書は、以下の点で受験には不向きな構成となっています。
1. 演習問題が少ない
通信制高校の教科書は、基本的に読み物として設計されているため、演習問題の掲載数が圧倒的に少なくなっています。たとえば1単元につき数問しかないことも珍しくなく、入試対策としてのアウトプット訓練が不足します。
2. 応用問題や発展内容がカットされている
基礎学力の定着を優先するため、数列の一般項やベクトルの問題、長文読解の論説文など、大学入試頻出分野がごっそり省かれていることがあります。教科書で学んでいないことが試験で出題されるという矛盾が生じやすいのです。
3. 共通テスト形式・記述形式に対応していない
共通テストでは選択肢の工夫、グラフ・資料読解など、形式そのものが独特です。こうした形式の訓練は教科書には含まれておらず、市販の問題集や模試で補う必要があります。
通信制高校から大学受験を目指すには?4つの学習対策
通信制高校の教科書だけでは大学受験には不十分ですが、逆に言えば、必要な対策を早めに講じれば、十分に志望校合格は可能です。以下は通信制高校の生徒に推奨される代表的な学習対策です。
1. 市販の参考書・問題集を併用する
教科書に載っていない内容、演習不足を補うには、やはり市販教材が必須です。たとえば:
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『数学I・A 基礎問題精講』(旺文社)
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『関正生の英文法ポラリス』(KADOKAWA)
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『きめる!共通テスト現代文』(学研)
など、レベルに応じた市販書籍での補強が効果的です。
2. 通信講座やオンライン予備校を活用
近年は「スタディサプリ」や「河合塾One」「Z会」など、月額1,000円前後で使える通信講座も増えています。これらは授業動画・問題集・AI添削などが一体化しており、通信制高校生の独学に非常に相性が良いツールです。
文部科学省も家庭学習の補助として、こうしたオンライン教材の活用を推奨しています[1]。
3. 進学コースのある通信制高校を選ぶ
通信制高校の中には「大学進学特化型コース」を設けている学校も存在します(例:第一学院高等学校・N高等学校など)。これらのコースでは、専用カリキュラムや受験対策授業があり、教科書外の学習サポートも受けられるため、独学が難しい生徒にはおすすめです。
4. 模試や過去問でアウトプット訓練を行う
大学受験では「問題を解き慣れる」ことが重要です。各大学の過去問や、進研模試・河合模試などを自宅で定期的に解く習慣をつけることで、受験の実戦力が身につきます。教科書にはない「初見問題への対応力」を伸ばせます。
通信制から難関大学に合格する生徒も増えている
通信制高校から大学進学する生徒は年々増加しており、文部科学省の統計では、私立通信制高校の卒業生の約20〜30%が進学先として大学を選んでいるというデータもあります。
また、N高やS高といった新興の通信制高校では、東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学などの難関大学への進学実績も報告されています。これは、教科書に頼らず、自分に合った学習方法とツールを組み合わせて戦略的に学習を進めた結果といえるでしょう。
転入時に教科書や制服は使い回せる?実例と学校の対応
全日制高校から通信制高校への転入を考える際、「せっかく買った制服や教科書は無駄にならないのか?」という疑問を持つご家庭は少なくありません。特に、保護者の立場からすれば、入学時にかかった費用が無駄になることへの不安は大きく、転入への心理的なハードルにもつながります。
この記事では、通信制高校への転入を検討している生徒や保護者に向けて、実際の通信制高校の対応例を紹介しながら、教科書・制服が転用可能かどうか、どのような扱いがされているのかを詳しく解説します。
制服の扱い:購入は任意が基本、前籍校の制服でもOK
まず結論からお伝えすると、通信制高校の多くは制服の着用を義務付けていません。もちろん、学校によってはオリジナルの制服を用意しているところもありますが、その購入は「希望者のみ」となっており、私服登校も自由というケースが主流です。
たとえば、以下のような学校が公式に「制服は自由」と表明しています。
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飛鳥未来高等学校(池袋キャンパス)
「制服もありますが購入は自由。前の学校の制服や私服で登校する生徒もいます」 -
くまもと中央高等学院
「指定の制服はあるが、購入は任意。前籍校の制服でもOK。私服通学も可能」 -
ゴールフリー高等学院(京都キャンパス)
「制服はあるが、着用義務はなし。前の制服で通っている生徒もいる」
これらの例からも分かる通り、通信制高校では“自由な服装”が基本であり、経済的な理由から制服を新たに購入しなくても問題ない環境が整えられています。
また、前籍校の制服を着用する際には、「エンブレムを外す」「ネクタイやリボンを変える」といったルールが設けられることもありますが、形式的な指導にとどまることが多く、日常的な登校に支障をきたすことはありません。
教科書の扱い:原則として「使い回し不可」、再購入が必要
制服に関しては柔軟な対応が可能である一方で、教科書に関しては原則として再購入が必要になると考えておいた方がよいでしょう。これは、通信制高校ごとにカリキュラムや使用教材が大きく異なるためです。
以下の理由から、教科書の使い回しが難しいのです。
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同じ教科でも、出版社・シリーズ・バージョンが異なる
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通信制高校はNHK高校講座や独自レポートに連動した教科書を採用
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教科書内容に対応した課題・添削が指定されている
たとえば、ある通信制高校では東京書籍の『新数学Ⅰ』を使用しており、その教科書に沿ってレポート問題が作成されています。仮に、前の学校で使っていたのが数研出版の『数学Ⅰ』であった場合、同じ単元でもページ数・例題・解法の流れが異なるため、レポート作成に支障をきたす可能性があります。
実際の学校対応は以下のようになっています。
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飛鳥未来高校:「教科書はすべて購入していただく必要があります」
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くまもと中央高等学院:「教科書は学校指定のものを使用するため、使い回しは不可」
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ゴールフリー高等学院:「教科書代は授業料に含まれており、転入後に学校から配布される」
つまり、転入後の教科書は新たに支給・購入が必要になるケースが圧倒的に多いというのが現実です。
教科書費用の補足:多くは授業料に含まれており実質的な追加負担は少なめ
転入に際して教科書を再購入する必要があると聞くと、保護者としては「また数万円かかるのでは?」と不安に思うかもしれません。しかし、実際には通信制高校では教科書代が授業料に含まれていることが多く、追加で請求されることはほとんどありません。
たとえば、私立通信制高校の場合、1年あたりの授業料(通信型)は20万円前後が相場ですが、その中に以下のような費用が含まれているケースがあります。
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教科書費(10科目前後で1万円〜1万5千円相当)
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レポート冊子
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副教材(資料集・問題集)
これにより、転入時の金銭的負担を最小限に抑えられる仕組みが整っています。もちろん、学校によっては別途教材費を請求するところもあるため、転入前には学校のパンフレットや担当者に確認をとることが重要です。
制服や教科書のことを理由に転入を迷うべきではない
保護者や生徒が通信制高校への転入を検討する際、「せっかく買った制服や教科書が無駄になるから…」と反対されるケースが多く見られます。しかし、教育の本質はそこではありません。
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制服の費用がもったいない → そのまま使える学校が多い
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教科書の再購入が不安 → 授業料に含まれているケースが多い
つまり、経済的理由で転入を諦める必要はほとんどないのです。
実際、通信制高校の説明会では、保護者のこのような疑問に丁寧に答えてくれる場が設けられていることも多く、現実的な不安を一つひとつ解消していくことができます。特に、制服の着用ルールや教科書代の内訳は事前確認がしやすいポイントですので、資料請求や個別相談を通じて積極的に情報を集めることが重要です。
まとめ:制服は使える・教科書は買い直し、でも心配は不要
通信制高校への転入時、以下のように整理しておくと安心です。
項目 | 使い回しできるか? | コメント |
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制服 | ○ 使える | 私服もOK。前籍校の制服も可(条件付き) |
教科書 | × 基本NG | 学校指定の教科書を新たに支給・購入 |
教科書費 | △ ケースにより | 授業料に含まれることが多く、追加費用なしの場合が多い |
転入は勇気のいる決断ですが、制服や教科書の問題は“解決できる課題”であって、“諦める理由”にはなりません。
まずは学校の説明会や個別相談を利用して、制服・教科書の取り扱いや費用について具体的な確認を行うことをおすすめします。そうすれば、安心して新しい一歩を踏み出すことができるはずです。
通信制高校だからこそ可能な夢や目標をもって学習できる環境を探してみてください。
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